令和7年度(第39期)事業計画書


公益財団法人一ツ橋綜合財団の、令和7年度(第39期)事業計画は、定款に基づいた次の4つの公益目的事業を柱として19件を予定する。

公益目的事業1
文化の創造に関わる創作活動(詩・短歌・俳句)を行っている個人に対する顕彰
    
 ○「詩歌文学館賞」の主催 ―1件
公益目的事業2
文化の創造に関わる創作活動を行っている個人を顕彰すること、及び顕彰する団体への助成、後援
    
 ○文学賞など顕彰事業の実施、後援 ―5件
公益目的事業3
科学及び文化の普及発展に関する講演会等の実施、及び研究活動を行っている団体に対する助成、後援
    
 ○文化講演会の実施、学術研究の助成 ―8件
公益目的事業4
社会生活の充実及び国際交流に関わる福祉活動、実践活動を行っている団体に対する助成
    
 ○社会福祉事業の助成 ― 5件
公1 「詩歌文学館賞」の主催
岩手県北上市の日本現代詩歌文学館

岩手県北上市「詩歌の森公園」の一角に建つ日本現代詩歌文学館

第40回詩歌文学館賞選考会は令和7年3月5日に東京・一ツ橋の如水会館で開催。詩、短歌、俳句3部門の受賞作を決定した。その贈賞式を5月24日に岩手県北上市の日本現代詩歌文学館で行う。第41回の選考会は令和8年3月4日を予定している。


この賞は、現代詩歌を総合的、専門的に収集保存、また諸研究に資するための日本現代詩歌文学館創設を記念して、初代名誉館長井上靖の創意によって設けられた。本賞は現代詩歌文学の振興に寄与することを目的とする(賞の概要―要項より)

公2 文学賞など顕彰事業の実施、後援
2-1 第10回「渡辺淳一文学賞」の共催

(賞の概要―要項より)
この賞は「豊富で多彩な作品世界を多岐にわたり生み出した渡辺淳一氏の功績をたたえ、純文学・大衆文学の枠を超えた、人間心理に深く迫る豊潤な物語性を持った小説作品を顕彰する」ため創設された。
選考会は3月31日。贈賞式は5月16日に東京會舘にて開催する。

2-2 第38回「柴田錬三郎賞」の共催

(賞の概要―要項より)
この賞は、「傑作『眠狂四郎無頼控』をはじめ、不羈の想像力を駆使した数々の作品でひろく大衆の心をうち、ロマンの新しい地平を切り拓いた柴田錬三郎氏の業績を称えて、氏の名を冠した賞を設け、現代小説、時代小説を問わず、真に広汎な読者を魅了しうる作家と作品を顕彰する」ために創設された。
選考会は10月6日、贈賞式は11月21日に帝国ホテルにて開催。

2-3 第23回「開高健ノンフィクション賞」の共催

(賞の概要―募集要項より)
この賞は、「行動する作家として、旺盛な探究心と人間洞察の結晶を作品に昇華し続けた開高健氏の功績を称えるために政治、経済、科学、歴史、スポーツなど、あらゆるジャンルにわたる作品を募り、21世紀にふさわしいノンフィクションを推賞する」ために創設。
より広く応募を募るために今回からオンラインでの応募受付も開始する。選考会は7月13日、贈賞式は11月21日。ともに帝国ホテルにて開催する。

 ※2-1、2、3は集英社と共催。

2-4 第31回「劇作家協会新人戯曲賞」の後援

この賞は、日本劇作家協会が、演劇界の未来を担う新しい才能の発掘のために設けたもので、新作戯曲を公募して、劇作家による審査のうえ、優秀作品を顕彰する。この賞の運営に対して後援する。

2-5 第70回「岸田國士戯曲賞」の後援

劇作家・岸田國士の遺志を顕彰すべく、白水社が主催する戯曲賞。演劇界に新たなる風を吹き込む新人劇作家の奨励と育成が目的。1955年に新劇戯曲賞として設置、79年に岸田國士戯曲賞と改称され現在に至る。新人劇作家の登竜門とされる。選考対象は、前年1年間(1~12月)に、発表、上演(オンラインも可)、執筆(選考委員の推薦が必要)された作品とする。令和7年3月に選考会が行われた第69回岸田國士戯曲賞は、安藤奎『歩かなくても棒に当たる』、笠木泉『海まで100年』に決定した。贈賞式は、5月12日に日本出版クラブで行われる。第70回岸田國士戯曲賞選考会は、令和8年3月に行われる。この賞の運営に対して後援する。


公3 文化講演会の実施、学術研究の助成
3-1 『図鑑NEOアート はじめての国宝』出版記念講演会
    「国宝をめぐる冒険」(仮)

令和7年2月に小学館から発売されて好評の『図鑑NEOアート はじめての国宝』。その刊行を記念して、8月3日に東京国立博物館平成館大講堂(東京都台東区)でイベントを開催する。300名(予定)を招き、博物館学芸員と、聞き手の文化系タレント、小学館担当編集者他が講師となって、東京国立博物館を案内。実際の展示物を鑑賞し、国宝の魅力を体験できるという、夏休みの自由研究等にも役立つ内容に。特に埴輪等のテーマを検討中である。会場でのリアル参加に加え、オンライン開催や、映像のアーカイブ化(後日)も予定している。

3-2 『小学一年生』創刊100周年記念特別授業
    「小学一年生からのメッセージ」(仮)

都内の学校あるいは廃校を会場に予定し、小一生&新小一生を100名ほど招いて、雑誌『小学一年生』(小学館)にゆかりのある、小学生にも大人気の著名人、『小学一年生』編集長らによる限定授業を開講。授業形式やワークショップ形式などのさまざまな形で子どもたちと触れあいながら、ここだけのオリジナル授業をしてもらう。子どもたちに学ぶ楽しさや知る愉しみを感じてもらえる内容を工夫する。実施予定は、令和7年12月~令和8年1月を予定。 オンライン開催やアーカイブ化も検討中。

3-3 『森羅記』出版記念トークイベント 北方謙三×高橋 典幸
    「クビライと時宗――小説家と歴史家、元寇を語る」

『三国志』、「大水滸伝」シリーズ、そして『チンギス紀』と、中国を舞台に数々の大河小説を送り出してきた北方謙三氏の新作『森羅記』が9月より刊行を開始する。(現時点で全15巻予定)主人公は、チンギス・カンの孫であるクビライと、鎌倉幕府執権・北条時宗。13世紀「元寇」の時代を歩んだ人間の生き様を描く、歴史巨編となる。この作品をより楽しむためのガイドとして、北方氏が歴史学者の高橋典幸氏とともに登場人物たちの魅力について語るイベントを10月に実施する。募集人数150名、場所は神田神保町・出版クラブホールを予定している。

3-4 『建築というきっかけ』刊行記念トークイベント
     永山祐子×荻野いづみ対談
    「夢はあきらめなかったものだけが実現する」

超高層ビルから狭小住宅、そしてジュエリーデザインにいたるまで、20~30のプロジェクトを同時進行し、いま、建築界で一番注目されている1975年生まれの建築家・永山祐子氏が、8月に集英社新書『建築というきっかけ』を刊行。それを記念して、閉鎖的な業界のタブーを打ち破る彼女はどんな働き方をしているのか。夢を探している学生や働き始めたばかりの20代、挑み続けている30代に響く言葉を、旧知のクリエイティブ・ディレクター、荻野いづみ氏との対談から引き出すトークイベントを開催。9月中旬~下旬に150名を招待して実施する。場所は都内ホールを予定している。


(3-1~3-2は小学館と、3-3、3-4は集英社と共催。いずれも参加費無料。新聞や雑誌、ホームページ、SNS等で講演会実施を告知。応募申込後、抽選のうえ、当選者に招待状を送る。)


3-5 東洋文化研究会の活動を支援

東洋文化研究会は、作家の岩下寿之氏を会長とする民間任意団体で、1988年3月に設立。現在会員は国内外に440名。昨年アメリカの大統領が替わり国際情勢がより一層緊迫の度を増す中、バランスのとれた国際情報の発信を目指す。令和6年より中国、台湾、モンゴルほかアジア全体を研究対象に広げ、著作、フィールドワークなどの活動を行っている。インドを対象にした講演会はすでに始めている。東南アジアの宗教観と身近な日本の宗教観の違いなど、日本の文化と各国文化との共通性や独自性を焙り出す目的で、国際色豊かな各界の講師を招く。この活動を支援する。

3-6 一般社団法人K-BOOK振興会
    第8回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」への助成

本(K-BOOK・韓国の書籍)を通じて日韓の文化交流の拡充をすすめるK-BOOK振興会。2011年に設立され、20年に一般社団法人となった。小説家の中沢けい氏が代表理事を務める。出版関係者向けに「日本語で読みたい韓国の本」、読者向けに「日本語で読める韓国の本」の情報をホームぺージやSNSで発信。さらに優秀な新人翻訳家の発掘を行う「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」も手がける。令和7年度の第8回は、2月より選考が始まり、結果は5月にホームページ等にて発表される。11月には受賞作を刊行予定。贈賞式は11月22日・23日の、K-BOOKを愛する読者、書店、出版社、韓国作家などが集い交流する「第7回K-BOOKフェスティバル」内で行われる。この第8回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」に助成する。

3-7 第5回「小学生がえらぶ“こどもの本”総選挙」への助成

こどもたちが「次の1冊」と出会う機会を提供することを通じ、自ら本を読むという読書習慣の醸成および読書文化の推進を目指して2017年度より開始された隔年事業。NPO法人こどもの本総選挙事務局が運営している。全国1万校以上の小学校を対象に「一番好きな本」の投票を促進。その上位10作を中心に、こどもたちによって選ばれた本を幅広く紹介。結果は大手メディアを招待して発表され、全国2000店舗の書店の協力を得て、結果発表フェアの展開が実施される。令和7年度は、5月5日よりWEBおよび参加学校に配布された投票用紙による投票が開始、9月8日に締め切り、令和8年2月7日に結果発表会が行われ、翌日より全国2000店舗での発表キャンペーンが実施される。この活動に助成する。

3-8 第18回「MOE絵本屋さん大賞2025」への助成

白泉社が絵本文化の発展と活性化を促すため2008年から主催している賞。売上げの8割が「古典(ロングセラー作品)」である絵本の世界において、新たな作家や作品の支援および開拓を目的としている。全国の絵本専門店・書店の児童書売り場担当者3000人にアンケートを実施。発売から1年以内のおすすめしたい新刊絵本を選んでもらい、最も支持された絵本30冊を決定し、年間絵本ランキングを発表。審査員を書店員にすることで、読者(購入者)に目線を合わせた公平な審査を担保しており、絵本文化と書店への効果的な支援を継続している。選考は令和7年8月より全国の書店さんに案内のうえ投票開始(10月締め切り)。絵本専門誌「MOE 2026年2月号」(12月26日発売)にてランキング発表。新聞広告にて周知、令和8年1月下旬、出版クラブホールにて贈賞式を開催。この運営に助成する。


公4 社会福祉事業の助成
4-1 社会福祉法人・全国手話研修センターの支援

ろうあ者への手話指導、手話通訳者養成や手話のできる人材の確保を目的とした全国手話研修センター。今年度の第20回全国手話検定試験事業においては、一般試験、団体試験とインターネット試験合わせて年間総受験者12000名を目標に実施する。インターネット試験は若年層に力を入れて一層の周知に努める。また、Web視聴ができる在宅学習教材「Let’s手話 Web学習5級編、および4級編」と集合研修とのパッケージ方式についての広報宣伝を強化し、団体および個人での利用者拡大を目指す。同3級、2級教材の制作準備も進め、試験の面接委員の養成研修にも力を入れる、また手話総合資料室では「手話総合資料室ウェブサイト」の更新、文献・映像・写真等収集の呼びかけ、提供資料のデータベース化および著作権・肖像権等の処理に取り組み、年間閲覧アクセス数4万回を目指す。この活動に助成する。

4-2 社会福祉法人・日本ライトハウスの支援

全国の視覚障害者等に対する情報提供サービス事業の充実・発展に取り組む日本ライトハウスの情報文化センター。令和7年度は、前年度の成果である日本語版「エース」「アクセシブル出版ナレッジベース」と電子書籍のアクセシブル化マニュアルを公開し、電子出版者への周知を進める。また日本デイジーコンソーシアムと連携し、電子出版者からのエースへの意見・要望をまとめ、改良に向けて国際デイジーコンソーシアムへ要望を行う。また、普通校で学ぶ視覚障害児童・生徒が使用する教科書・教材・考査の点訳依頼増加に対応するため、点訳者のコーディネートを行う専任職員の雇用を継続。加えて従来からの事業である、マルチメディアデイジー教科書・図書、テキストデイジー図書、シネマ・デイジーなどの製作・提供、バリアフリー映画会、児童向け点字雑誌「アミ・ドゥ・ブライユ」の発行と普及、点字・音訳・電子書籍等ボランティア養成、各種講習会・研修会の開催などを行う。これらの活動へ助成する。

4-3 社会福祉法人・日本点字図書館の支援

今年度も定評ある作家の新作や継続のシリーズ作などの録音図書(音声デイジー=文字表示がなく音声だけの図書)10タイトルを「一ツ橋文庫」として制作・提供。テキストデイジー図書(文字の拡大や合成音声での読み上げが可能な電子書籍)は200タイトル以上を目標に制作を目標にしている。またインターネットを使用し自宅で録音図書を製作する「びぶりお工房」でも200タイトル以上を目標に製作を目指す。さらに今年度は、生成AIを活用して写真や図表などの画像も可能な限り文章化したビジュアル的な図書や実用書の製作に取り組む。また、オリジナルの音声雑誌「にってんデイジーマガジン」は、一ツ橋綜合財団提供の通巻200号記念企画のコーナーを設けて製作・提供を行う。これらの事業に助成する。

4-4 認定NPO法人 日本・雲南聯誼協会の支援

日本と中国の友好を願う人々に向けて中国の教育の推進を図るため、学校建設とその後のコミュニティ形成を支援する協会。令和7年度は前年に続き、雲南省紅河州河口瑤族自治県の小学校3校への支援を行う。また、設立25周年の今年は、記念事業としてホテルグランドヒル市ヶ谷で記念式典を行う。このほか、協会の活動および雲南の広報のため講演会等のイベントを開催する。これらの活動に助成する。

4-5 公益社団法人・日本図書館協会への助成

協会内の図書館災害対策委員会では、災害等で被災した図書館の調査を行い、必要な場合には支援を行う。昨年は元日の能登半島地震の被害も大きかったが、8月の日向灘沖地震に伴って南海トラフ地震への危険も喚起された。同委員会は「図書館で考える南海トラフ地震への備え」を公表したが、今後も自然災害への備えと対応に関する情報を適宜発信する。
また、被災した図書館の復旧、復興を支援するために、物心両面の支援を行う。8~9月の2ヵ月間を募集期間として被災した図書館の応募を経て審査し、修繕費用、図書購入などの費用を負担する。この活動に助成する 。


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